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拡大版コーポレート・ガバナンス研究会
平成28年度第3回 拡大版コーポレートガバナンス研究会
『株式市場の構造改革(安定株主体制の縮減)の必要性と 共同(集団的)エンゲージメント体制創設の提案 』
開催日:
平成28年9月27日(火)
ゲストスピーカー:
濱口 大輔 様 企業年金連合会 運用執行理事
研究会メンバー:
池尾 和人 慶應義塾大学経済学部 教授 座長
上村 達男 早稲田大学法学部 教授
柳川 範之 東京大学大学院経済研究科・経済学部 教授
鹿毛 雄二 ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 特別顧問
松尾 直彦 西村あさひ法律事務所 弁護士
岩間 陽一郎 一般社団法人 日本投資顧問業協会 会長
研究会専門メンバー:
柴田 拓美 日興アセットマネジメント(株) 代表取締役社長兼CEO
西 惠正 DIAMアセットマネジメント(株) 代表取締役社長
渡邊 国夫 野村アセットマネジメント(株) CEO兼執行役社長
大場 昭義 東京海上アセットマネジメント(株) 取締役会長
松下 隆史 三井住友アセットマネジメント(株) 代表取締役社長兼CEO
山内 英貴 (株)GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO
オブザーバー:
八木 博一 セコム企業年金基金 常務理事
引間 雅史 上智大学 特任教授
長尾 和彦 一般社団法人 日本投資顧問業協会 副会長専務理事
平成28年度の拡大版コーポレートガバナンス研究会は「アセットオーナーとして果たすべき役割とアセットオーナーから見たアセットマネジャーへの期待」をテーマとし、第3回の研究会には、企業年金連合会 運用執行理事の濱口大輔様にゲスト・スピーカーとしておいで頂き、安定株主の推計、日本独自の広範囲にわたる分散した安定株主体制の問題点、実効性のある株主ガバナンスの確率、共同(集団的)エンゲージメントのメリットについてご説明頂きました。その後、参加メンバーによる自由討論が行われました。濱口様のお話の概要は、以下の通りです。
■ 安定株主比率もしくは政策保有株の比率は一般に言われているほどには下がっていなくて、東証一部全企業の平均でも少なくとも35%、実態は恐らくそれ以上に高いと思われます。問題は、これはあくまで平均なので、個別の企業を見ると40%、50%、60%というところも結構あります。安定株主の内訳は、銀行が5%、生保・損保を合わせて5%、事業法人や財団などが25%という数字になっています。
■ 日本独特の広範囲で、しかも超分散された安定株主がいったいどういう問題を起こしているのかをまとめると、1つには、株主によるガバナンス(エクイティガバナンス)の空洞化:現在まさに議論されている株主のガバナンス、もしくはエクイティガバナンスと言われていますが、この空洞化につながっているのではないかということです。株主が企業活動を監督する仕組みがコーポレートガバナンス、企業統治であるということであれば、いま説明したような取引関係を使って株主自体を会社側が、もしくは経営陣が選択して政策保有させている状況になっています。昔は銀行や保険会社が積極的な意味で事業投資先として、むしろガバナンスを効かせるために株を持つ。会社側から見れば政策保有されている状況だったと思います。ところが、世の中はどんどん変わり、今や状況は一変して、主客が逆転して会社側が強い立場になり、取引関係維持の見返りに金融機関に政策保有させている状態が増えているようです。金融機関にしろ、取引関係にある事業法人にしろ、結構はっきりおっしゃいますが、株を売ると取引を切られるのです、だから売れないのですという状態になっているところが多いようです。
■ われわれ一般機関投資家としては、安定株主は縮減してほしいと思っていますが、では、どうしたらいいのか、提案の1つ目は、安定株主体制を縮減し、一般機関投資家の影響力を増すことが必要ということです。東証一部平均で年金基金は9%、投信は4%ですから、国内機関投資家は13%です。それに対し、安定株主は35%ですから、数では圧倒的に負けています。スチュワードシップ・コードで一生懸命対応しろと言われていますが、多勢に無勢で、一人ひとりがやっていては話にならないと思います。
活発な意見交換により、アセットオーナーとアセットマネジャーに関わる議論について理解、認識を深められる興味深い内容になっております。是非ご一読ください。