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拡大版コーポレート・ガバナンス研究会
平成27年度第2回 拡大版コーポレートガバナンス研究会
『競争力の強い資産運用会社の戦略と「日本版スチュワードシップ・コード」及び「コーポレートガバナンス・コード」への対応』
開催日:
平成27年6月9日(火)
ゲストスピーカー:
柴田 拓美様 日興アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長兼CEO
研究会メンバー:
池尾 和人(慶應義塾大学経済学部 教授) 座長
上村 達男(早稲田大学法学部 教授)
柳川 範之(東京大学大学院経済研究科・経済学部 教授)
鹿毛 雄二(ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 特別顧問)
松尾 直彦(西村あさひ法律事務所 弁護士)
岩間 陽一郎(一般社団法人 日本投資顧問業協会 会長)
オブザーバー:
山田 俊浩(明治安田アセットマネジメント株式会社 コンプライアンス・オフィサー 兼コンプライアンス・リスク管理部長)
長尾 和彦(一般社団法人 日本投資顧問業協会 副会長専務理事)
平成27年度の拡大版コーポレートガバナンス研究会は「競争力の強い資産運用会社を目指す経営戦略」をテーマとし、第2回の研究会には、日興アセットマネジメント株式会社代表取締役社長兼CEOの柴田拓美様にゲスト・スピーカーとしておいで頂き、日興アセットマネジメント株式会社での取り組み状況、監督と業務執行の分離や社外取締役の導入などといったガバナンス体制、日本版コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードについてのお考えをお話頂きました。その後、参加メンバーによる自由討論が行われました。柴田様のお話の概要は、以下の通りです。
■ 「B. グローバルな機関投資家への運用力・商品力。自社運用能力の強化、良好なトラックレコードの確保」云々と書いてございます。要は経営管理の体制も大切ですが、それはあくまでも内向きの話です。お客様から見れば、興味のない話です。お客様の視点に立って見ますと、私どもは資産運用会社ですので、資産運用の原点に戻りたい。ですから運用能力の拡充を図ることにしました。今まで自社が運用能力を持っていなかった運用分野、つまりお客様のニーズに応えられなかった分野がいくつかありました。その中で、喫緊の課題だったグローバル・エクイティ、アジア・エクイティ及びマルチ・アセットの三分野の運用能力を新たに獲得しました。もちろん、新しいチームの能力は国際水準で見ても上位にあることが獲得の条件でした。
■ やはり投資信託の販売システムのオープン・アーキテクチャー化が十分に進展していないということです。もちろん、受託者責任ということを考えますと、販売業者はお客様のためにベストなものを選ばなければいけない。ベストのものを選ぶ努力はしているが、なぜかベストのものが系列のアセットマネジメント会社の中にあるということが多いようです。オープン・アーキテクチャー化の進展が、運用会社同士の競争を高め、ひいては投資家の利益に結びつき、市場規模の増大に結びつくのではないでしょうか。株式の場合、上場株式である限り、全ての銘柄に対して、どの証券会社でも売り買い注文を出せます。公募投信ではそうはいきません。それぞれの販売会社で扱える商品が限定されています。販売会社が選んだもの以外は買えません。お客様がこの投信を買って欲しいと販売会社に頼んでも、販売会社の対象リストに入っていなければ、注文の執行はできません。これが恐らく日本で中小の投資信託会社が伸びない背景の一つです。小さいところの商品を入れてもらうのは、大変なことなのです。私案ですが、解決案かも知れないものがあります。それは日本独自の仕組のメリットを有効活用することです。日本ではごく少数のIT業者が、業界標準システムの投資信託販売のためのプラットフォームを提供しています。このプラットフォームのライブラリーに総ての公募投信を入れさせるだけで、投資信託のオープン・アーキテクチャー化が可能になる訳です。
■ 社外取締役としての会長、その立場は一体どんなものなのでしょうか?意外と辛い立場なのかも知れません。まず、最初は会社の中のことをよく知りません。また経営と社外取締役とを結ぶ立場にあるということですから、経営と社外取締役との間でサンドウィッチになる立場です。渉外面では、アクティビストの投資家が来て、「内々にお話をしたい」となると、矢面に立たなければなりません。アメリカでも、会長と社長の間が悪くて困るのだというケースもあるようです。ただ、そもそもガバナンスサイドと執行サイドというのはそういう緊張関係があるものではないかということだと思います。したがって、社外取締役会長は、楽な立場ではありませんが、それがそもそもガバナンスのあるべき姿であろうかということです。大切な役割です。
■スチュワードシップ・コードについてです。イギリスのスチュワードシップ・コードの第4条と日本版スチュワードシップ・コードの第4条を比べますと、違いは明確です。イギリスのスチュワードシップ・コードの第4条に何が書いてあるかを、単純に申し上げますと、あるアセットマネジャーがある会社の経営者に苦言を申すような場合には、それなりの手続きをもって行うべしと書いてある。それしか書いていないのです。裏を返しますと、エンゲージする、つまり投資先の会社に苦言を呈するという事態は、手続きを要するほど例外的であるということです。エンゲージすると、どういうリスクが生じるかと言いますと、インサイダーになる可能性があります。インサイダーになった途端に、そこの会社の株式は売買できなくなります。そうなりますと、投資運用業者の義務であるところの受託者責任に反することになります。従いまして、受託者責任に反しないような社内手続きをいろいろ決めるというわけです。これがとても大事なところで、これがイギリス版のスチュワードシップ・コードの第4条に書いていることの裏の思想であると考えます。
活発な意見交換により、「資産運用会社の経営戦略等」に関わる議論について理解、認識を深められる興味深い内容になっております。是非ご一読ください。