一般社団法人 日本投資顧問業協会

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コーポレート・ガバナンス研究会

拡大版コーポレート・ガバナンス研究会

平成28年度第5回 拡大版コーポレートガバナンス研究会
『アセットオーナーとして果たすべき役割りとアセットマネージャーへの期待』

開催日:

平成28年12月7日(水)

ゲストスピーカー:

八木 博一 様 セコム企業年金基金 顧問

研究会メンバー:

池尾 和人 慶應義塾大学経済学部 教授 座長
鹿毛 雄二 ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 特別顧問
松尾 直彦 西村あさひ法律事務所 弁護士
岩間 陽一郎 一般社団法人 日本投資顧問業協会 会長

研究会専門メンバー:

渡邊 国夫 野村アセットマネジメント(株) CEO兼執行役社長
大場 昭義 東京海上アセットマネジメント(株) 取締役会長

平成28年度の拡大版コーポレートガバナンス研究会は「アセットオーナーとして果たすべき役割とアセットオーナーから見たアセットマネジャーへの期待」をテーマとし、第5回の研究会には、セコム企業年金基金 顧問の八木博一様にゲスト・スピーカーとしておいで頂き、セコム企業年金基金における年金資産の運用に関する基本方針、ESG投資について、アセットオーナーの社会的責任、企業年金の受託者責任の問題、などについてご説明頂きました。その後、参加メンバーによる自由討論が行われました。八木様のお話の概要は、以下の通りです。

■運用の基本方針について、企業年金の場合、タイトルは「基本方針」と書いてありますが、明確に方針と書いたものはほとんど存在していないと聞いています。運用の基本方針ですが、かつて基本資産配分が方針であると説明されていた時期もありました。したがいまして運用の基本方針の中に基本資産配分が書いてあれば、それが方針であるという受け止め方をされてきたわけです。しかし現実的なことを考えていきますと、基本資産配分とは別にほとんどの企業年金は年度の基本資産配分戦略という言い方で、全く違うものを方針として基本資産配分を行い、運用しているという実態もあります。また、年度の資産配分の中にはトラックレコードがほとんどないようなオルタナティブ運用も相当程度入っているという実情を考えますと、はたしてこれは健全な意味での基本方針といえるのかという問題があるのではないかと私は思っております。

■運用機関さんの方からも、ESG投資をやると本当に儲かるのですかという質問がたまにあります。ESG投資の定義ですが、アクティブ運用にもESG投資が入ってまいりますし、パッシブ運用にも入ってくるということです。考えてみますと、これはESG情報を活用した資産運用の総称がESG投資なのだろうと今考えています。ですから、儲かるかどうかは、ひとえにESG情報を使って運用する運用機関さんの腕次第です。違った言い方をすると、ESG投資のどういう属性を抽出した運用をしてほしいかというオーダーをアセットオーナーが出すか出さないかが問題なのであって、ESG投資が儲かるか儲からないかという議論とは全く異質な次元なのではないかと考えています。

■ 企業年金は非常に不思議な世界です。これは以前からいろいろな方々がポツポツと発言されていらっしゃるわけですが、大きな問題があります。どういう問題かというと、年金選択率です。企業年金は、年金選択率をちょっといじるだけで負債のボリュームが大きく変わってしまいます。どういうことかと申しますと、終身型の年金制度の場合を例にとりますと、セコム以外と断言していいと思いますが、セコム以外の企業年金の場合は年金選択率100%です。ですから、現役の社員はその会社を辞めると全員が年金を選ぶという前提で計算しています。しかし年金選択率が100%という企業年金は、おそらく存在しないと思います。実態は1桁台、あるいは多くても3割台。ということは、このいいかげんな年金選択率で計算された、年金制度の中だけの負債額は過大評価されています。過大評価されていることをそれぞれの企業年金の中で母体企業に対して、あるいは加入者に対してちゃんと説明をしているのであれば問題ないと思いますが、そういう形跡を見た記憶が私はありません。たまにいろいろな企業年金制度の決算レポートを見る機会もありますが、そんなことを書いてあるレポートを私は見た記憶がないです。このようないいかげんな状態がなぜこれまでずっと温存されてきたのかを考えると、もともと日本の企業年金の場合は厚生年金基金でした。厚生年金基金ですと国の年金を持っていますから、そういう意味では100%年金選択するのは当然です。しかし、このルールは代行返上した時点で見直されるべきものであったはずです。しかし誰もこういうことに対して疑問を呈していなかったということで、こういう問題が温存されてきてしまっている。こういうあり方は、企業年金自身が衿を正さなければいけないのではないかと考えています。

活発な意見交換により、アセットオーナーとアセットマネジャーに関わる議論について理解、認識を深められる興味深い内容になっております。是非ご一読ください。

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